相続した不動産の分け方
先月、懇意にしていただいている司法書士と税理士の先生方と一緒に相続に関する相談会を土曜日、日曜日の2日間を使って開催しました。
事前に新聞折り込み広告を入れて、1組につき50分間を1枠にして予約制にしたのですが、たくさんのお申し込みがあり、改めて相続で問題を抱えていたり、将来発生する相続を不安に思っている方が多いことが分かりました。
相続に関する相談内容は、多岐に亘りました。私が受け持ったのは、不動産の相続や相続した不動産の売却に関することです。被相続人(亡くなった方)が所有していた不動産は相続人に相続されるのですが、これは自動的に名義が変わるわけではありません。相続人が法務局へ相続登記の申請をしなければなりません。
今回は、相続人が複数の場合、相続した不動産をどのように分けるのかという話題です。
相続した不動産の分け方は4つあって、それぞれメリット・デメリットがあります。そして相続した不動産を売却するのか、所有し続けるのか、によっても分け方が変わってくると思います。
相続した不動産の分け方
1.共有
例えば被相続人の子供2人が相続人だった場合、それぞれ2分の1ずつの共有名義にすることです。
この方法は、不動産を平等に分けることができて、所得税がかからない方法として利用されることが多いです。相続した不動産を相続人が共有にすることは多いですが、デメリットもあります。上記の例で言えば、兄弟が2分の1ずつ共有した場合、2人のうちどちらかが急にお金が必要になった場合、1人の意思では不動産を売却することができず、必ず共有者の同意が必要になります。さらに将来、兄弟のどちらかが亡くなった場合に、亡くなった方の配偶者や子供などが相続人として共有者に入ってきて、時間の経過とともに複雑になっていく可能性があります。
2.現物分割
不動産そのものを物理的に分ける方法です。例えば被相続人の子供2人が相続人だった場合、被相続人の自宅は兄に、賃貸しているマンションは弟に不動産ごとに相続することです。しかし、不動産ごとに分ける場合は、少なくとも相続人の数だけ不動産がなければなりません。ですから自宅しかない場合は現実的に難しいです。さらにそれぞれの不動産の価値をどのような基準で算出するかということや、相続した不動産が同程度の価値であるとは限らないのが、難しい問題です。
3.換価分割
不動産を売却、現金化して相続人の間で現金を分ける方法として利用されます。換価分割することを遺産分割協議書に記載すれば、贈与とならずに名義を単独にすることができます。不動産を売却するときには、単独名義の方がスムーズなので、相続した不動産の売却を前提にする場合には、この方法を使うことが多いです。
この方法なら、現物分割のようにそれぞれの不動産の評価で揉めることもないので、分かりやすいのですが、相続人の内の誰かが売却する予定の家に住んでいて売却できない、などということもあります。また不動産を売却した場合は、売却するための費用がかかったり、譲渡益が出て譲渡所得税が課税されたりすることがあります。
4.代償分割
不動産を相続人の一人が相続して、不動産の相続をした人が他の相続人に現金を支払う方法です。例えば被相続人の子供2人が相続人だった場合、長男が自宅を相続して登記名義人になり、その半分にあたる現金を次男に渡すなどです。相続した不動産に長男が住んでいた場合には、引き続き住み続けることができるというメリットがありますが、一方で次男に支払う代償金の負担が大きくなります。もし長男が代償金をすぐに用意できない場合、相続人全員の同意があれば分割払いにすることもできます。代償分割の場合でも、やはり代償金の根拠になる不動産の評価額はやはり問題になります。
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編集後記
「不動産を相続する」と聞くと、プラスのイメージを持ってしまいがちですが、相続する不動産の中には、地方にある農地であったり、資産評価の低い土地や建物であったり、必ずしも有効利用できる不動産ばかりではありません。利用できなければ管理や固定資産税などで費用負担も発生します。今回の相談会でも「今回の相続でこの不動産を父が相続することになるが、その後は自分たちが相続しなければならない。この不動産を相続しないようにするにはどうしたら良いか」などというご相談もありました。相続人全員が必要ない不動産があったとしたら、相続登記をしないということもあり得ます。相続登記は自動的に名義が変わるわけではない、ということは初めに書いた通りです。もし相続登記をしなければ、それは将来の所有者不明土地になっていってしまう可能性が高いです。相談者の方からお話を伺いながら、そんなことを考えていました。
ところで今回開催した相続相談会は、たくさんの方から、相談のお申し込みをいただき、とても励みになりました。そこで一緒に相談会をやった司法書士と税理士の先生方と「8月くらいにもう一度やろう」ということになり、現在準備を進めているところです。