所有者不明土地問題を解決へ!相続登記の義務化で改めて注目される「昭和55年の民法改正」とは?

既にご存じのことと思いますが、2024年4月1日から、不動産に関する非常に重要なルールが始まりました。それは「相続登記の義務化」です。相続で不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に法務局への登記申請が義務付けられました。正当な理由なく、これを怠ると過料の対象となるため、大きな話題となっています。
この新制度の導入により、これまで「先代名義のまま」「何十年も放置していた」といった古い相続案件が急浮上してきました。そして、古い相続の権利関係を調べる過程で、ある一つの重要な法改正に改めてスポットライトが当たっています。それが、1980(昭和55)年の民法改正(相続法)です。今回は、相続登記の義務化がもたらした影響と、古い相続を紐解く上で欠かせない「昭和55年の民法改正」に関する話題です。

相続登記義務化の影響:過去の相続が現代の課題に
なぜ今、古い相続案件が問題になっているのでしょうか?日本には長年「所有者不明土地」の問題が存在しました。登記簿上の所有者が不明、あるいは連絡が取れない土地が全国で増加し、公共事業の妨げや、土地の有効活用を阻む原因となっていました。 この問題を解決するために、国は相続登記を義務化しました。この義務化は、施行日である2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。つまり、昭和の時代に発生した相続についても、まだ名義変更が済んでいない場合は、原則として2027年3月末までに登記を完了させる必要があるのです。これにより、多くのご家庭で「亡くなったおじいちゃんの名義のままになっている土地はどうすればいいのか」「当時の相続人は誰がいたのか」といった調査が必要になりました
昭和55年の民法改正(相続法)という境界線
古い相続案件を調査する際、弁護士や司法書士といった専門家が必ず確認するのが「その相続は昭和55年以前か、以降か」という点です。なぜなら、昭和55年の民法改正によって、法定相続人の権利(法定相続分)が大きく変わったからです。この改正は、相続法における歴史的な転換点とも言える重要なものでした。主な目的は、残された配偶者の生活保障を手厚くすることにありました。
改正前と改正後の比較:配偶者の相続分がアップ!
具体的に、最も大きな変更点は「配偶者と子がいる場合の相続分」です。

改正前は、子が配偶者の2倍の権利を持っていました。しかし、改正により、配偶者と子が平等な権利(1/2ずつ)を持つことになりました。これは、夫または妻を亡くした配偶者が、残りの人生を経済的に安定して送れるようにするための、時代の要請に応じた改正でした。この改正は、1981(昭和56)年1月1日以降に発生した相続に適用されています。

なぜ今、この改正が注目されるのか?
相続登記の義務化により、例えば以下のようなケースが出てきます。
ケーススタディ
(昭和50年に亡くなった祖父名義の土地がある。祖母と父(一人っ子)が相続人だった)
この場合、適用されるのは「改正前の民法」です。祖母の相続分は1/3、父の相続分は2/3となります。もし、このケースで「現在の法律と同じ1/2ずつで相続した」として書類(遺産分割協議書)を作成しようとすると、法的に間違いとなり、登記ができない可能性があります。当時の法律に基づいて権利関係を確定させる必要があるのです。
相続登記の義務化は、過去に遡って日本の土地所有のあり方を見直す大きなきっかけとなりました。古い相続案件に直面した際は、まず「いつ相続が発生したのか」を確認し、当時の法律(特に昭和55年の民法改正)に則って権利関係を整理することが不可欠です。手続きは複雑になることも多いため、ご自身での判断が難しい場合は司法書士や弁護士などの専門家に相談されることを強くお勧めします。適切な手続きで、大切な不動産を次の世代へしっかりと引き継ぎましょう。

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編集後記

先日、不動産売却のご依頼を受けたお客様の物件が、相続登記されていなかったため、司法書士に戸籍などを確認してもらいました。被相続人が昭和53年に亡くなっていたため、旧民法に基づき、奥様が9分の3、お子様3人がそれぞれ9分の2ずつ相続することになると説明を受けました。その説明を聞きながら、約30年前に相続登記されていなかった実家の登記について自分で申請書を作ったときのことを思い出しました。
相続が発生したのは昭和40年代で、当時は登記に関する知識もなく、また現在のようにインターネットで調べられる環境もない中で、本を読んだり法務局に何度も聞きに行ったりして、戸籍の収集や法定相続分の理解、登記申請書の作成など、すべて手探りで進めるしかなかったです。そういえば配偶者3分の1だったなぁと、今回の件で、その時のことがよみがえりました。












