トウリハウジング通信 2025年8月号

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生活保護と不動産の所有

今回は「生活保護と不動産の所有」という、ちょっと複雑なテーマです。
生活保護とは、資産や能力等すべてを活用しても、なお生活に困窮する人に対して、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障して、自立を助ける制度です。もし、生活保護を受給する人が不動産を所有していた場合には、原則として不動産を売却しなければなりません。ただし、居住用の家屋やそれに付随する土地は、保有が認められる場合がありますので、必ずしも売却しなければならないわけではありません。売却が必要かどうかは、資産価値や処分の可能性、地域の状況などを総合的に考慮して判断されます。

不動産を持っていても生活保護は受けられる?「例外」の条件とは

生活保護と資産の原則として、生活保護制度は、初めに書きました通り「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度ですので、まずは自分の持っている資産を活用することが前提になります。不動産も当然その対象に含まれます。つまり、「不動産を持っているなら、それを売って生活費に充ててください」というのが基本的な考え方です。

① 自宅として住んでいる場合

もっとも代表的な例外がこれです。現在住んでいる家(居住用不動産)であれば、一定の条件を満たせば所有が認められることがあります。所有が認められる条件として
●家の資産価値がそれほど高くない
●売却しても賃貸より生活が苦しくなる
●高齢者や障がい者で、住み慣れた環境を離れるのが困難
このような場合には、自宅を手放さずに生活保護を受けられる場合があります。

もし自宅に空き部屋がある場合、「空いている部屋を貸して家賃収入を得てください」と指導されることがあります。また敷地の一部を駐車場として貸し出すよう指導される場合もあります。それらの場合には、家賃収入を差し引いた額が生活保護費として支給されます。

① 不動産の売却が困難な場合

たとえば…
●山林や農地で売却するのが難しい
●売却にかかる費用が高額になって、赤字になる
●相続したばかりで名義変更が済んでいない
こうした場合は、売却活動を継続していることなどを条件に一時的に不動産を所有したまま生活保護を受けることが認められることもあります。

② 住宅ローンが残っている場合

原則として、住宅ローンが残っている家は生活保護の対象外です。なぜなら、生活保護費でローンを返済することは「財産形成」にあたるからです。しかし、以下のような条件を満たす場合は例外的に認められることもあります。

●残債が少額
●5年以内に完済予定
●他に住む場所がない

このようなケースでは、ローン返済を条件に生活保護が認められる可能性があります。
(高齢で引越しが難しく、ローン返済を条件に生活保護が認められた、など。)

③ 農地や山林などの事業用不動産の場合

農業や林業などで生計を立てている場合、その土地が生活の糧となっていると判断されれば、所有が認められることもあります。ただし、規模や収益性によって判断されるため、全てが認められるわけ ではありません。

いろいろな例外を書きましたが、最終的な判断は各自治体の福祉事務所が行います
同じような状況でも、地域や担当者によって判断が異なることもあるため、まずは相談してみることが大切です。

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編集後記

生活保護と不動産に関連して
以前、高齢の親子(父親:80才代後半、長男:60才代半ば)が2人で、父親が所有する分譲マンションに住んでいました。2人共、生活保護を受けていました。
部屋の資産価値がそれほど高額ではなく、長男も障害を持っていて転居が難しいということで、当初は、不動産の所有が認められていたのだと思います。暫く経って、父親が自宅での生活が不自由になったため施設に入所し、それから1年後に長男も施設に入所したため、それまで住んでいた父親所有のマンションは、空室になってしまいました。生活保護は最低限度の生活を保障するものなので、マンションの管理費相当額は支給されません。所有者である父親も住んでいないことにより、管理費の支払いが後回しになり、管理費の滞納が始まりました。マンション管理組合も父親が入所した施設が分からないまま、時間が経って、管理費は長期滞納されました。長期間滞納した管理費を回収するのは、困難を極めます。生活保護受給者を守るための例外があるのは、理解できますが、マンションの管理費を滞納すると、マンションの健全な運営に支障をきたし、今度は他の区分所有者にも迷惑をかけることになってしまいます。なかなか難しい問題です。