トウリハウジング通信 8月号

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カテゴリー: トウリハウジング通信

国有地の払い下げから所有権移転まで

弊社には約10年前に購入して、現在も所有している戸建があります。狭い私道の突き当りにあるその戸建は、新築してから相当な期間経っていました。前面道路は狭いとはいえ、建築基準法第42条2項道路なので再建築することはできます。

購入したときには短期契約の賃借人が入居していましたが、しばらくして退出し、空き家になりました。その後は建て替えではなく、リフォームして賃貸することにしました。建て替えを検討しなければならないくらい古い戸建なのですが、実はその戸建の一部が国有地の上に乗ってしまっていて、それを解決してからと思っていたのです。

先ほど書きました通り狭い国有地は公図で見ると、狭い道路の突き当りが戸建で、その奥の道路のような細長い土地です。国有地には弊社が購入した戸建と両隣の家も乗っています。

公図の上では道路のように見えるのですが、現地へ行くとそこに道路はなく、それぞれの家の敷地にしか見えません。道路として機能していない里道(りどう)ではないかと考えられます。


 

里道について

明治時代、道路はその重要度によって国道・県道・里道の3種類に分けられていましたが、その後、道路法施行によって、全ての道路は国有地になりました。そして、里道についてはそれぞれの地方自治体が管理するようになりました。その中で、重要な里道は市区町村道に指定されて、それ以外の里道は道路法の適用外になりました。道路法の適用外として残された里道は、車両などが通れない狭い路地などがほとんどです。そして、その多くは実質的な維持管理は地方自治体ではなく、周辺の住民任せで半ば放置されてしまったので、今回のように建物の敷地になってしまうケースは少なくありません。


 

弊社が購入した戸建の前所有者も両隣の所有者も無償(というか無許可)で使用していましたが、弊社は建物が乗っている部分を購入させていただけないかと考えて、建物を購入するとすぐにその国有地を管理している関東財務局東京財務事務所(文京区湯島)へ出向きました。

このように国や地方自治体の土地を個人や法人が購入することを払い下げ(売払申請)といいます。

里道や水路の払下げにあたっては、当然のことですが、現在も道路や水路として利用されているような場合は払下げを受けることができません。払下げを受けられる土地の条件としては、現在使用または利用されていない里道や水路(これらを旧法定外公共物といいます)であることが必要です。

繰り返しになりますが里道・水路は、地方自治体が管理しています。ですから売払申請をする場合には、まずその土地が使用または利用されていないことを地方自治体に証明してもらうことから始めます。旧法定外公共物であるという証明はすぐに出してもらうことができました。


今回の土地は細長い道路状の1筆の土地の上に複数の家が乗っているので、弊社の戸建が乗っている部分の売払申請をするためには分筆しなければなりません。ここからは土地家屋調査士に依頼をして、測量、分筆するラインを国と調整、そして隣接している土地所有者などと境界の立ち会いをお願いしました。

そしてずいぶん時間がかかりましたが、この度無事に国と売買契約を締結して所有権を取得することができました。

国との売買契約は私たちがいつも行っている売買契約とは違います。まず重要事項説明がありません。事前に契約書が送られてきて、収入印紙を貼って印鑑を押して必要書類と一緒に東京財務事務所へ持っていきます。そこで書類をチェックしている間、ずっと待っていて、書類の審査が終わると会計係の部屋へ行って代金を納付して手続きは終わりです。

代金について言えば、払い下げを受ける土地の代金のほかに、今まで使用していたということで、10年分遡って使用料が発生します。すべて足しても国が算出する価格は市場で取引されている価格に比べると安く、今回の場合についていえば測量にかかった費用の方が、負担が大きかったくらいです。そして所有権移転登記は国が手続きをします。1週間ほど経ったら権利証ができ上がりますので、東京財務事務所へ取りに行って完了です。

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編集後記

国有地の払い下げというのは長くても半年くらい、と考えていました。
たぶんほとんどの案件はそのくらいで終わると思うのですが、今回は10年近くかかってしまいました。

こんなに長くかかったのは、いろいろな事情が重なったからです。

このエリアは法律によって昭和26年から日本中のすべての土地を測る地籍調査という事業の中にあって、既に測量は終わっていました。あとは国の認証が出たら隣地との境界が確定する、という矢先に東日本大震災が起こりました。この大震災により、東京の土地も地殻が動いてしまい、地籍調査で測った位置がズレてしまったのです。

国の認証が出るまでに約3年かかりました。また関東財務局の担当者も何人も変わって、担当者が変わると多少必要な提出書類が増えたりして、一度出した申請書を取り下げることになったり、直近では隣地の方から「新型コロナウイルスに感染するのが怖いので現地に行きたくない」と分筆の位置を確認する立ち会いをキャンセル・・・といろいろなことがありました。アクシデントがあり、時間がかかったのですが、所有権移転手続きは意外とあっさりと終わった、という感じです。

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