トウリハウジング通信 2024年4月号

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カテゴリー: トウリハウジング通信

空き家

今回は空き家問題と空き家に関する法律改正の話です。空き家はどういう事情で空き家になっているのか、調査するときに判断しなければなりません。例えば、別荘などの「二次的住宅」として使用されていて調査時点で人がいなかったり、売りに出している「売却用の住宅」のため、空き家になっていたり、賃貸募集中の「賃貸用の住宅」のため、入居者がいなかったり、実態を把握するのが難しいです。その中で、人が住んでおらず、長期にわたって不在で、そのまま放置される可能性が高く、明らかに別荘や募集中の住宅ではない空き家を「その他の住宅」に分類しています。定期的に利用されることがなく、管理も不十分であることが多いので、日本中で大きな社会問題になっています。

5年ごとに総務省が公表する「住宅・土地統計調査」によれば、「その他の住宅」に分類される空き家は、平成10年(1998年)から平成30年(2018年)の20年間で、約1.9倍の182万戸から347万戸に増加しており、今後も増え続けていくと予想されます。

空き家が発生する理由は、生まれ育った家に愛着があるため売却をためらったり、将来親族の誰かが使うのではないかと考えたり、「そのうちどうにかしよう」と放置していたり、ということが考えられます。しかし、放置された空き家は、放置されたゴミなどによる悪臭、破損した外壁による景観の悪化、倒壊や外壁や屋根材の落下、隣地や道路への枝のはみ出しなど、所有者だけの問題ではなく、近隣にも迷惑をかけてしまいます。その他にも、ねずみや害虫の発生、腐敗した動物の糞尿、壊れた窓などから不法侵入などの問題が発生します。そこで、令和5年12月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空家法」といいます)の一部改正が施行されました。この法律の改正前は、指導・勧告の対象になっていたのは「特定空家」だけでしたが、法律改正により新たに「管理不全空家」も市区町村からの指導・勧告の対象となりました。

【特定空家とは、以下のような状態の空き家】
・そのまま放置すれば、倒壊など著しく保安上危険となる状態
・そのまま放置すれば、著しく衛生上有害となる恐れのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態

そして、今回の法改正で新たに指導・勧告の対象になった管理不全空家は、1年以上誰も住んでいない状態の家で、窓や壁が破損しているなど、管理が不十分であり、今後もそのままの状態だと特定空き家に指定される恐れのある空き家を指します。

【管理不全空家とは、以下のような状態の空き家】
・壁や窓の一部が腐食・破損、落下の可能性がある
・雑草や枯れ草が管理されない(病害虫などが発生する可能性)
・敷地内にゴミなどが散乱、放置されている

自治体は今まで、「特定空家」のように完全に放置されているという訳ではない建物について、倒壊など危険な状態になるまで指導・勧告などを行うことができませんでした。今回、「管理不全空家」という区分を新たに設置することによって、自治体が早期に指導・勧告などを行い、「特定空家」という危険な状態になることを水際で防ぐことができます。

家屋は、適切な管理がなされていないと劣化が早く進みます。自治体は「特定空家」「管理不全空家」と認定すると、所有者に適切に管理をするように助言や指導を行います。それでも改善が見られない場合は勧告や命令を行います。自治体からの指導に、空き家の所有者が従わず、勧告を受けると、固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなります。ご存じのとおり、土地や家屋を所有していると、固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。住宅やマンションなどの居住できる建物の敷地(住宅用地)には、特例措置が適用されるため、例えば固定資産税の課税標準額は、面積200平方メートル以下の部分までの住宅用地(小規模住宅用地)は6分の1、小規模住宅用地以外の住宅用地は3分の1に軽減されます。自治体から勧告を受けると、その軽減措置が受けられなくなるのです。さらに、所有者が命令に従わなければ、最大50万円以下の過料に処される場合もあります。国土交通省によると、空き家を取得した経緯の半分以上が相続によるもの。高齢化社会のいま、空き家に関する問題は今後も増えていくと思います。親が住んでいる家を将来どうするかなどについて、親を含めた親族などの関係者全員で事前に話し合っておくことが大切だと思います。

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【あめふりうります】
文:平田 昌広
絵・原案:野村 たかあき 
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ねこきちは根っからのぐうたら者。
【猫が顔を洗うと雨が降る】とはいいますが、ねこきちは顔を洗うのも面倒な猫なので、ねこきちが住んでいるこのあたりでは随分長い間、雨が降っていません。
『もしも雨がお金で買えるならいくら払ってもいい』狸たちの話声を聞いたねこきちは、金儲けができると【雨降り売ります】と看板を出しました。

編集後記

今年(2024年)4月1日から不動産の相続登記義務化が始まりました。2024年4月1日か、自分が不動産を相続したことを知った日のどちらか遅い日から3年以内に相続登記をしなければなりません。相続は親が所有している不動産とは限りません。例えば、両親の兄弟、つまり叔父、叔母が独身あるいは配偶者が先に亡くなって、子供がいない場合も法定相続人になる可能性があります。それまで交流がなかった親戚から突然、連絡が来ることだってあり得るのです。

今回の相続登記の義務化は「被相続人が亡くなったことを知ってから3年」以内に相続登記をしなければならないので、自分が相続をしたことを知らなければ、上記の「3年」は始まりません。相続したことを知っているのに「まだ3年あるから」と思っていると、すぐに時間が経ってしまいますし、相続人が多くて相続登記に時間がかかる場合もあります。被相続人から不動産を相続したことを知ったら、できる限り早く対応するのが良いでしょう。なお相続登記義務化に続いて、2026(令和8)年4月からは不動産の所有者の住所・氏名変更登記の義務化も始まります。