トウリハウジング通信 2023年8月号

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相続放棄

今月は相続放棄に関する話題です。

相続放棄というのは、亡くなった人(被相続人)が残した財産をすべて引き継がないことです。相続を放棄するには、被相続人が亡くなって、自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の申請をします。相続放棄の申請が受理されると、相続に一切関わることができなくなりますし、相続放棄をすると放棄をした子供に代襲相続もされません。ですから、相続放棄を決定する時は慎重に考えてからが良いと思います。

相続放棄を考えるのは、被相続人(亡くなった方)の不動産や預貯金など、プラスの財産より借金などのマイナスの財産の方が多い場合や相続争いに巻き込まれたくない場合、更に相続した不動産が売却できそうにない原野や山林などの場合もあると思います。しかし、不動産に関しては相続を放棄したとしても、すぐに管理責任を逃れられるわけではありません。

相続放棄を放棄して、新たに相続財産の保存義務を負う人が決まって、その人が相続財産の管理を始めるまでは、不動産の保存義務があるからです。保存義務というのは、例えば空き家をめぐって周辺の住民とトラブルが発生したり、事故が起きてしまったりした場合には、その責任を負わなければなりません。また家屋が老朽化して倒壊する危険があれば、補強工事をしなければなりませんし、雑草が生い茂って害虫が発生するのであれば、除草・駆除しなければなりません。

相続については、まず被相続人の配偶者は必ず相続人になります。そして被相続人に子供がいれば、子供も相続人になります。子供がいない、または相続放棄した場合は、被相続人の両親、祖父母などの直系尊属が相続人になり、直系尊属がいない、または直系尊属全員(両親や祖父母)が相続放棄した場合は、被相続人の兄弟へと、次の順位へ相続人が移っていきます。相続放棄をして次の順位へ相続人が移ったとしても、家庭裁判所からは「あなたが新しい相続人になりました」と連絡が来ることはありません。もし自分が被相続人の借金などのマイナスの財産から逃れるために相続放棄をして、次の順位の相続人に相続放棄をしたことを伝えなければ、その人は知らないうちに被相続人の借金などを相続してしまい、親族間のトラブルになってしまうこともあります。ですから相続人になる人たちが、全員で話し合って決めるのが良いと思います。

相続人全員で話し合った結果、その内容によっては全員が相続放棄することもあるでしょう。相続人全員が相続放棄をしてしまうと、被相続人の全ての財産は相続人がいない財産になってしまいます(相続人不存在ということですが、この時点では不動産の保存義務はまだ相続人にあります)。

法律上、相続人不存在の財産は、国庫に帰属するのですが、相続人や特別縁故者がいないことを法的に確認、そして国庫へ帰属させる手続きをしなければ、国の財産にはなりません。

※特別縁故者とは、亡くなった人と特別な関係にあった人を指します。例えば、内縁の妻や家族同然に生活をともにしていた他人などが該当します。

国庫に帰属させるためには、相続放棄した人が利害関係人として家庭裁判所に申し立てをして、裁判所に相続財産清算人を選任してもらいます。相続されるはずだった財産が国庫に帰属するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 利害関係人が家庭裁判所に相続財産清算人選任の申立てをする
  2. 相続財産清算人が選任される
  3. 相続人や特別縁故者の捜索が改めて行われ、不存在であることが確認される
  4. 被相続人の不動産で売却できるものは売却する
  5. 債務の返済や相続財産清算人への報酬が支払われる
  6. 残った財産があれば手続きをして国庫に納められる

ご覧のように相続財産清算人には、債権者への弁済や不動産などの売却、国庫への帰属手続きもあるので報酬や費用が発生します。そのため管理する財産の数量や難易度にもよりますが、相続財産清算人選任の申し立てをする際には数十万~100万円程度の予納金を支払わなければなりません。

この予納金は、不動産が売却できないなど、相続財産が現金化されないときには、戻ってこない場合もあります。

ところで被相続人に借金などの債務があった場合、不動産の売却代金や預貯金などプラスの財産から債権の回収が見込めない場合、債権者は連帯保証人に支払いを請求します。相続人が連帯保証人になっていた場合、相続放棄しても連帯保証債務は残りますので、支払い請求があれば応じなければなりません。

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編集後記

今回の相続放棄に関連して、もし被相続人が所有していた不動産が共有名義だった場合、共有持分はどうなるのでしょうか、国庫に帰属するのでしょうか。

民法(第255条)には「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と書かれています。国庫ではなく、他の共有者に帰属するのですが、この内容ですと相続人全員が相続放棄した場合には、共有持分は、すぐに他の共有者が持分を引き継ぐことができると思ってしまいます。しかし、前半で書いたとおり相続人不存在の場合には、他の相続人や特別縁故者がいないことを法的に確認、そして国庫へ帰属させる手続きをしなければ、国の財産にはなりません。共有者がある場合も、この考えに基づいて、被相続人が所有していた不動産に共有者がある場合で、相続人全員が相続放棄した場合には、他の相続人や特別縁故者がいないことを法的に確認したうえで、その持分を他の共有者に帰属するという考え方が一般的になっています。